レビュー「無職転生 - 異世界行ったら本気だす -」

著者:理不尽な孫の手
掲載サイト:小説家になろう


お願いします。世界を滅ぼさないでください。
俺は殺してもいいです。俺の子供を、未来を、奪わないでください。
お願いします。初めてなんです。あんなに幸せに思えたの、初めてなんです。

─────主人公 ルーデウス・グレイラット

この作品のタイトルを見て、「よくある異世界転生テンプレもの」と判断される方は多いと思います。それどころか数話読んでもそう思うでしょうし、僕も最初はそう思っていました。
しかし、それで切るにはあまりにももったいない!是非後半まで読んでいただきたい作品です。

34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートは、ある日家を追い出され、人生を後悔している間にトラックに轢かれて死んでしまう。目覚めた時、彼は赤ん坊になっていた。どうやら異世界に転生したらしい。
 彼は誓う、今度こそ本気だして後悔しない人生を送ると。

※作品あらすじより引用

この作品の主人公ルーデウス・グレイラット君。転生した後にどうなるか。

あらすじの通り生まれ変わってすぐ、あらゆるものに懸命に取り組み、文字や言葉を乳児期からあやつり、剣も幼いころから振れるようになります。

特に魔法に関しては実に凄い。聖級とかいうものすごく難易度の高い魔術をさらりと使いこなします。しかも無詠唱。

この無詠唱という技術、使える人物がろくにいないという超高等技術らしい。

うん。すごいね。実際どんなところに行ったって、彼は負けないよ。

だが敵はもっと強かった。

話の後半に「七大列強」という世界で最も強い七人と言われている人たちと戦う羽目になりますが、こいつらがマジやばい。今まで勝ち続けてたルーデウスがあっさりやられる。

戦闘描写が上手いおかげで、七大列強が敵に回った時に凄まじい絶望感を感じさせてくれます。勝てないよ、どうするんだよというハラハラ感を全力で煽ってきます。

そしてだからこそ、何とかしてそれを乗り越えたときのカタルシスは素晴らしい。

そもそも考えてみると、「主人公は一般人よりはるかに強い。でも敵はもっと強い。」という力関係は、バトル物作品における王道の力関係と言えるでしょう。

ヒーローアニメ等でも主人公は30分の中で必ずピンチにならないといけないし、そしてだからこそ主人公が勝利した時に喜べるのだと思います。

ちなみにこの作品のキャラは、称号とも呼べるようなものを持っていたりします。『甲竜王』『剣神』『魔界大帝』『北帝』そんなカッコいいのが並びます。

しかしそんな中、我らが主人公は、『泥沼』のルーデウスです。こんな中にも、主人公は上位陣の中では、決して強くないのだと分かります。

そう。『泥沼』。実に地味です。

だがそれがいい!!

個人的にいぶし銀の良さが感じられて逆にかっこよくて大好きです。

さて、前項でも語りました通り、てきは主人公よりはるかに強いわけです。では一体、どうやってそれらに勝つというのか。

幸運が味方するのか。あるいはより強いチートでも手に入れるのか。

そんなことはなく、友人たちの助けによって、困難を乗り越えていきます。

力を合わせ、強力な武器を作り、情報を集める組織を作り、権力を振るえるうコネも作って、決戦ではみんなで戦う。

いやほんと、繰り返し書きますが本当に「努力・友情・勝利」といったように感じました。

その仲間たちも頼れる素晴らしいやつらで、描写が偏りがちなヒロインと同じくらい好きになれるキャラクターたちばかりです。

個人的に一番好きなのはとある神父さん。

初対面ではルーデウスより弱いのに「天才魔術師だ」とか言ってくるまるでかませのようなキャラでした。

しかし後半、最後の方。武力じゃどうしようもない事態に陥ったとき、彼はさっそうと助けに来てこういいます。

「僕は天才だ。天才に出来ない事なんて無い、任せてくれ」

いやほんと、かっこよすぎだろ!すげぇよ!頼りがい在りすぎだろ!!

実際彼がいなかったら乗り越えられなかった困難がいくつあったことか!できるなら全部語りたい!

ちなみに無論彼だけじゃなく、他にも助けてくれる人たちはたくさんいます。どいつもこいつもかっこいいです。

女キャラだけじゃなく男キャラも魅力的に描かれているのは、名作と呼べる要素の一つだと思います。

ここまで敵がいかに強いかを語ってきたわけですが、それは決して主人公が弱いというわけで貼りません。

むしろ強いです。最凶最悪の魔術師なんて呼ばれたりもします。各国の様々な人から畏れられ、子供たちからも、母がものすごいのは分かるけど父はさらに別格らしいと尊敬されたりしています。

ではそんな彼は家庭で亭主関白やっているかというと全くそんなことはありません。

奥さんに昼間からセクハラしては叩かれ、
誤解なのに妹には叱られとりあえず頭をさげ、
月一でしか会えない幼い娘に誰だっけという顔をされ凹んだりしてます。

なんかこう書くと結構ひどい目に会ってるような気がしますが、実際読むととてもコミカルで、微笑ましいものを見るような気分になれます。

あれですね。愛が伝わってくるんです。なんでじゃれ合いの範疇なんだとよく分かります。ハーレムものというと眉を顰める人もいるかもしれませんが、俺としてはそんなに奥さんが好きなら仕方ないねと思いました。

実際、彼の後半の彼の戦う理由は全て家族を守るためです。自分の妻子に手を出すならば、神だろうが悪魔だろうが、ラピュタだろうがぶっ飛ばします。

でも彼はそのレベルに挑めるほどには、精神的にも肉体的にも強くないのです。
よく足を震わせてますし、片腕なくしたりしてますし、勝ち目がない時だってあります。

それでも家族を守るために、自分より強い敵へと挑んでいきます。彼は英雄とかではなく、家族を守る父親なわけです。

主人公が好きになれるかどうかは、作品が好きになれるかどうかを考えるうえで重要な要素ですが、僕は子供が生まれて父親になってからのルーデウスが一番好きです。

奥さんにも子供にも優しく、普段は謝ってばかりのように見えて、いざという時家族のために立ち上がる親父。

正直言えば、こんな父親欲しかった!と思うくらいですね。妻が三人いてもいいんだよ!そこに愛があるんだからさ!

長々と書きましたがまとめますと、ともかく後半まで読んでほしい!と強く思います。
前半も面白いけど、後半はそれ以上に面白いから!
一番上で引用した、ルーデウスのセリフが出てくるくらいまで読んでいただけたらなと思います。

著者:理不尽な孫の手
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